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ピアノで奏でる『もののけ姫』: Enrique Lázaroによる久石譲の名曲の鮮やかな再解釈

  • 執筆者の写真: Jiyoon Auo
    Jiyoon Auo
  • 4月23日
  • 読了時間: 5分
A person rides a large white wolf through a lush forest, wearing a fur hood and goggles. The scene is vibrant with a sense of adventure.

久石譲が手がけた『もののけ姫』の音楽は、スタジオジブリの物語を力強く彩る、忘れがたい要素のひとつです。特にメインテーマは、フルオーケストラのために作曲されており、弦楽器、管楽器、打楽器が織りなす豊かなハーモニーが、それぞれ異なる色彩と感情をもたらしています。そんな繊細で重厚なオーケストラ曲を、たった一台のピアノで再現するのは、決して簡単なことではありません。必要なのは、高い演奏技術だけでなく、多彩な音色や感情を一つの楽器で表現するための創造力。Enrique Lázaro はその挑戦に真正面から向き合い、原曲への敬意を込めながらも、独自の発想で新たな命を吹き込みました。彼のピアノアレンジは、忠実さと独創性が絶妙に調和した、美しい再解釈となっています。


<Original Orchestra>

<Piano arrangement by Enrique Lázaro>

ピアノの音域を巧みに使ったアレンジ

Enrique Lázaro のアレンジで特に印象的なのは、ピアノの音域を巧みに活かしている点です。冒頭は高音域から始まり、まるでフルートのような柔らかな音色が静かに響きます。その音は、聴く人を優しく包み込むような、穏やかで神秘的な雰囲気を作り出しています。

曲が進むにつれて、メロディーは中音域へと移り変わり、まるで弦楽器のような温かみを感じさせます。この音域の滑らかな移行が、アレンジに色彩を加え、ピアノという一つの楽器が持つ豊かな表現力を見事に引き出しています。


また、このアレンジには少しユニークな課題もあります。というのも、元々オーケストラの中に組み込まれていたピアノソロのパートを、単独のピアノ曲として再構築する必要があったのです。Enriqueは、右手にメロディーとハーモニーの両方を担わせることで、厚みのある響きを実現。一方で左手は安定したリズムと支えを保ち、全体にバランスと明瞭さをもたらしています。原曲の印象的なソロセクションを、ソロピアノでもしっかりと際立たせる、巧みなアプローチです。


メインセクションが終わると、両手がユニゾンで動くパートへと移行します。低音から高音まで広範囲をカバーしながら、より力強く音を重ねていくことで、メロディー自体はシンプルなままでも、感情的な高まり=クライマックスが生まれます。音域とダイナミクスの対比が、壮大さと感情の深みを加え、このアレンジの中でも特に印象的な瞬間となっています



テンポと間によって描かれる構成と流れ

このアレンジを際立たせているもうひとつの要素が、Enrique によるテンポの細やかな変化です。全体を通して慎重に設けられたテンポの移り変わりは、音楽の感情の流れを自然に導いてくれます。たとえば、穏やかで内省的な場面ではテンポをゆっくりにすることで、より深い余韻を生み出し、逆に少しテンポを上げる場面では推進力が生まれ、新しいセクションへと滑らかに誘います。これらの変化は決して極端ではなく、まるで指揮者がオーケストラを物語の中へ導くかのような、自然なテンポの揺らぎです。

これらのテンポ指定は演奏者にとって貴重な道しるべとなり、特に場面が切り替わる瞬間に、音楽の流れを丁寧に描く手助けをしてくれます。こうした細部への注意が、作品にさらなる生命力を与え、聴く人に物語をより鮮明に伝えることができるのです。


さらに、このアレンジの魅力は、曲の構成を明確に分ける工夫にも見られます。Enrique は音のテクスチャ(音色の重なり)や、効果的に配置された「間(ま)」を使って、各セクションの移行を丁寧に描いています。ひとつの場面が終わると、メロディーが静かに消え、代わりにハーモニーが前に出てくるような演出がされており、音楽の中に「呼吸する余白」が生まれます。この余白が、聴き手に次の展開への準備を促してくれるのです。

オーケストラ曲をピアノ1台にアレンジする場合、楽器ごとの役割分担がないため、構成が曖昧になりがちです。しかし、この作品では「音の間」や「質感の変化」を巧みに使うことで、構造が非常にわかりやすく整理されています。それぞれのセクションがしっかりと完結し、移り変わりも自然に感じられます。


ピアニストにとって、こうした「間」は音符と同じくらい重要です。その空白を丁寧に演奏することで、音楽の輪郭がよりはっきりと浮かび上がってきます。ひとつひとつの場面にしっかりと向き合い、感情が十分に落ち着いてから次に進む――その心構えこそが、より豊かで表現力のある演奏につながるのです。そしてそれは、演奏する人にとっても、聴く人にとっても、より深い満足をもたらしてくれるはずです。



原曲への敬意とピアノらしさの絶妙なバランス

Enrique のアレンジが素晴らしいのは、『もののけ姫』の世界観を大切にしながらも、ピアノという楽器の特性を活かして新たな表現を加えている点です。メロディーは基本的に原曲に忠実なので、作品のファンであればすぐに「あの旋律だ」と気づくでしょう。

しかし、音の質感(テクスチャ)や音域の変化、そして強弱のつけ方など、さまざまな工夫によって、新鮮さと深みのある物語がピアノだけで語られていきます。


このアレンジは、単にオーケストラ版をそのままなぞるのではなく、ピアノの魅力を最大限に引き出しながらテーマを再構築しています。たとえば、右手で和音を担う配置や、音域を自在に移動させる展開、そして音と音のあいだに生まれる“間”を活かすことで、音楽に呼吸と生命が宿ります。


聴いても、演奏しても、このアレンジは深い体験をもたらしてくれます。演奏者にとっては、単なる再現ではなく、「音を通して物語を語る」という新たなチャレンジとなるはずです。まさに、ジブリ映画が映像と音楽で描いてきた世界観を、ピアノひとつで語り直すような感覚です。そして、スタジオジブリや久石譲の音楽を愛する人にとっては、『もののけ姫』の世界を今度はひとりのピアニストの手によって、新しい形で旅するような体験になるでしょう。楽譜はこちらのリンクからダウンロードできます。


ぜひ、この美しいアレンジを楽しんでください!



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